「NBonline 経営と IT 新潮流 2006 ~攻める経営戦略、攻める IT 投資~」セミナーレポート

2006/6/28 - トピックメーカー/上浦倫人

「攻めの IT 投資」の前提条件は「目標設定」と「投資対効果の評価」

 2006年6月21日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ東京で、日経ビジネスオンライン主催による企業経営者向けのセミナー「経営と IT 新潮流 2006 ~攻める経営戦略、攻める IT 投資~」が開催されました。

 最初の講演者は伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長の小林 栄三氏です。創業150年の歴史を持つ同社について小林氏は「生まれついての B2B 企業」だと語り始めました。そして常に最新の情報技術を業務に取り込みながらこれまでも変革を続けてきた、と述懐しました。 小林氏は現在推進中の業務改革運動「ITOCHU DNA プロジェクト」の概要を示し、「現在は経済情勢の好転を受けて、『守りの経営』を堅持しながら『攻めの経営』へのシフトを強めるべき時期だ。そのためには企業の原点に立ち返って『いま何をすべきなのか』を見据えた上で、積極的な情報化投資や社内での CIO の立場強化など、IT を軸に据えた業務改革を遂行しなければならない」と力説しました。

『インテル vPro テクノロジー』により、IT インフラの管理コストを大幅に削減できることをアピールした吉田 和正 インテル株式会社 代表取締役 共同社長。(※画像をクリックすると拡大します。)

 続いて登壇したインテル株式会社 代表取締役共同社長の吉田 和正氏は、IT 投資の是非を決める基準は究極的には「競争力の強化に結びつき、企業の成長につながるかどうか」であると断言し、インテルにおける具体的な IT 投資戦略を解説しました。 吉田氏は元インテル会長アンディ・グローブの「測定できなければ、評価・管理はできない」という言葉を引用しながら、明確なゴール設定を行い、さまざまな IT プロジェクトの投資対効果を定量的に評価・比較して最も効果的な投資プロジェクトを選択する、インテル独自の評価手法を紹介。「ゴール設定」「投資効果の測定」「組織力強化」のサイクルを確立することがビジネス価値の創造につながる道だと強調しました。

 さらに吉田氏は、現在インテルが推進する『インテル vPro テクノロジー』により、IT インフラの管理コストを大幅に削減できることを聴衆にアピール。こうした技術革新によって IT の運用管理やセキュリティ対策のコストが急速に低下しつつある現在では、むしろ「IT 投資をしないこと」のほうが大きな事業リスクになりうると指摘し、「事業の継続的成長と競争力強化を目指す経営者は、自分自身が CIO としての目を持ち、進化し続ける IT を積極的に活用しなければならない」と締めくくりました。

日本版 SOX 法対応を見据え、IT 投資を生かせる社内体制構築を

 最後の講演者となる日経情報ストラテジー編集長 多田 和市氏は、「現在の成長企業とは、世の中の変化を素早く把握し、それに的確に対応できる『賢い組織』にほかならない」と主張しました。 そしてスタッフサービス・ホールディングスやカルビー、アスクル、キヤノン電子など、明確なヴィジョンを適切な IT 投資によって具現化してきた「賢い組織」の数々を紹介し、それぞれの企業が達成課題と IT をどのように結びつけてきたかを説明しました。さらに多田氏は「内部統制を強化して『組織 IQ』を向上すれば、IT 投資をより効果的に活用できる」という研究報告を紹介して、日本版 SOX 法を機に「賢い組織」への変革を遂げるべきだと訴えました。

 セミナーを締めくくるパネルディスカッション「攻めの SOX 法を考える」では、インテル 吉田氏、早稲田大学 ビジネススクール教授 平野 雅章氏、株式会社みずほデータプロセシング 常務取締役 伊藤 重隆氏をパネリストに迎え、おもに2008年4月以降に適用が開始される予定の「金融商品取引法」(日本版 SOX 法)のインパクトをめぐってディスカッションが行われました。 それぞれの分野で深い経験を持つ各パネリストの意見は、「日本版 SOX 法を単なるコスト要因としてではなく、競争力強化のチャンスとしてポジティブにとらえるべきだ」という点で一致。そのためには「トップダウンによる推進」「CFO の役割強化」「効果的な IT 導入」「社内文化の刷新」などに取り組まなければ---といった議論が展開されました。

 当日は定員400名の会場がほぼ満席となり、熱心に講演メモを取る参加者の姿があちこちに見られるなど、非常に盛況なセミナーとなりました。来場者の多くが関心を寄せていたのは、やはり2008年度3月期からの導入が予定されている日本版 SOX 法の問題でしょう。IT 部門を含め、上場企業のあらゆる部署に対して強力な内部統制を課すこの法制は、現在は多くの経営者から「個人情報保護法に続く、新たな頭痛の種」と受け止められている印象があります。

しかし、内部統制の本質が「企業運営の透明化を実現し、企業体の『頭』と『手足』をより統合的・効率的に連携させる」ことにある以上、日本版 SOX 法対応は企業体質を強化し、組織力を向上する絶好の機会ともなりえます。本セミナーの各講演者からも、「新法制への対応という『守り』の発想から、内部統制の強化を競合他社に対する優位性につなげる、『攻め』の発想へと転じなければならない」「企業のミッションを明確化することが『攻めの IT 投資』の必須条件だ」というメッセージが繰り返し発せられ、そのためのさまざまなヒントが提示されました。この「攻めの IT 投資」をどのように遂行してゆくかが、今後の企業運営の明暗を分けるカギになりそうです。

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