これまで無線LANのオフィスなどへのビジネス利用は、盗聴に対するセキュリティの問題もあり、多くの企業が採用に積極的というわけではなかった。しかし、ここ数年、LANを利用可能にする前にユーザーを認証するための技術である「IEEE802.1x」や「WEP」「WPA」といった暗号化技術の普及によって無線LANのセキュリティ性能が飛躍的に向上したことで、導入を積極的に進める企業が相次いでいる。
これら無線LANを採用した企業の動機を見てみると、単にオフィスからケーブル類を無くす、という点だけには決して留まってはいない。今回紹介する事例では、ノートブックPCと無線LANを組み合わせることによってオフィスのワークスタイルそのものを変えていこう、というビジネスシーンの新たな潮流を追ってみた。
2004年に東京本店新社屋を竣工した竹中工務店は、この新社屋建設にあたって、建築とITの融合による次世代オフィス環境の構築を行っている。その際、IT部門が掲げた3つポイントのうちの1つに「コミュニケーション、コラボレーションの向上」というのがある。
「光の運河」と呼ばれるガラス張りで吹き抜けのミーティングスペースを中心に、会議室や食堂など館内のどこでも無線LANの利用を可能にすることで、館内のあらゆる場所をワークスペースにできるオフィス環境を構築した。館内では約200台のインテルCentrinoモバイル・テクノロジを実装したノートブックPCがこのモバイル環境の下、ペーパレスの打ち合わせに使われている。これにより、正式な打ち合わせだけではなく、社員同士の情報共有の場所が増えたことで、社内コラボレーションの機会が大幅に増えたという。
「ナレッジマネージメント」が重要視される現代の企業活動においては、知識共有のためのソフトウェア・ツールだけではなく、それを最大限に生かせる環境、つまりはノートブックPCと無線LANによる情報共有といった、ハードウェア環境の構築も不可欠だ。
中国3大自動車メーカーのひとつ上海General Motors(上海GM)は、中国全土をカバーするために、上海・瀋陽・烟台の3都市に製造工場とオフィスを有している。同社はこれまで、各拠点間や従業員同士での情報伝達手段として固定電話網を利用してきたが、固定電話網を使っていることに以下の3つの問題点を挙げている。
「1.」、「2.」は、日本でも多くの企業が採用している携帯電話の社内利用という方法で解決できるが、「3.」の拠点間の長距離通話コストという点では、携帯電話は優れた選択肢とは言えない。
そこで、上海GMが選んだのは、VoIP(Voice over IP)ベースの通話網の構築だった。インテルソリューション・サービスと地元Seastar社の協力の下、2005年8月より電話網をVoIP化する試験プロジェクトを開始した。90台のインテルCentrinoモバイル・テクノロジー対応のノートブックPCに、Cisco社の「Cisco IP Communicatorソフトウェア」をインストールすることで、ヘッドセットを利用したIP電話環境を実現したのだ。長距離通話を地域の公衆回線網ではなく、VoIP網にルーティングすることで、通話コストを平均12%も削減することに成功したという。
このように、モバイル・テクノロジーは、単にオフィスのケーブルをなくしたり、省スペースというだけのメリットにとどまらず、ワークスタイルを変化させ、業務の効率化やコストカットに貢献している。
今後も新しいモバイル・テクノロジーによって、まったく新しいワークスタイルが提案されていくかもしれない。
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