企業とは、『利潤を追求することで社会貢献するための組織』であることは、高校の社会科の授業でも習うことだが、実際のところは、社会的な利益と企業利益が一致するとは限らない。 企業利益を追求するあまり、違法行為や反社会的行為を行ってしまい、社会的信用を失って事業が追い込まれる例も後を絶たない。 米国でも、1990年代から不正会計問題が頻発し、記憶に新しいエンロン事件に至っては、一企業だけで済まされる問題に収まらず、アメリカ社会に大きな損害を与えたのだ。 その頃から、声高に叫ばれ始めたのが「コンプライアンス」である。
「コンプライアンス」とは、「法令遵守」と訳されるが、むしろ法令以外の社会的規範も含めて遵守するという意味で用いられている。 事実、法令を守っていても、倫理的に許されない行為により、社会に大きな打撃を与える企業も多い。
そこで、企業側が、法令を守るだけでなく社会規範に反する行為をしないことを宣言し、それを実現していくための仕組みを作っていくことを「コンプライアンス」とする使い方が多く見られるようになった。
「コンプライアンス」を推進できている企業は、より優れた統制がとれる企業として高く評価され、企業ブランドを高めることができる。 このため、現在多くの企業で、ITを利用して企業全体の統制を行う仕組みや、自社ホームページを通じた一般への情報公開など、様々な角度から「コンプライアンス」を推進している。
中でも、PC資産管理とセキュリティーにおける「コンプライアンス」に着目し、注目されているのが富士フイルムだ。 膨大なPC資産を保有している富士フイルムだが、先頃、インテルサイトに掲載された事例記事で、同社がこのテーマに関して認識していた課題と、2006年末以降に実施されるという解決策の詳細が明らかにされた。
この記事によると、グループ全体で保有する約2万台のPCは、管理ソフトを使って構成情報を日々収集しているのだが、その内の5%、つまり1000台のPCの情報が読み取れないということだ。 富士フイルムは、この1000台のPCは、電源が入れられてないか、廃棄されたPCだと推測している。 数億円分のPC資産が不明というのは財務会計上望ましくなく、もし電源が入れられてなかっただけだとしても、ウィルス対策などのシステム状況が確認できず、セキュリティー面での脆弱性が危惧される。 とはいっても、全国の支社や事業所にあるすべてのPCを正確に管理するのは、現実的に考えて非常に困難で、この問題は、富士フイルムに限らず、ほとんどの大企業が共通して抱えるジレンマとなっている。
この問題に対し、富士フイルムは「2006年末以降、vProテクノロジー対応PCを順次導入」し、改善を図っていくとしている。 vProテクノロジー対応PCであれば、PC資産管理という点では、電源が入っていないPCであっても、接続されているハードウェア資産や、インストールされているソフトウェア資産の構成情報を収集することができる。 また、セキュリティーという点では、電源が入っていないPCをリモートから起動して、セキュリティーソフトの更新などを行い、最新の状態に保つことが可能だ。 さらに、そのセキュリティーソフトも、ユーザーの操作する環境とは隔離された、システム管理者のみが制御できる環境で動作するため、ユーザーの操作ミスによる停止や削除といったトラブルを回避できる。
前掲の事例記事は、「セキュリティーの意識を2万人に対して徹底するのは困難です。だからこそ、できるだけ自動的にセキュリティーを守る仕組みを取り入れて、技術の力でカバーしていきたい」という同社のIT担当者のコメントで締めくくられている。 たしかに、vProテクノロジーは、PC単体でのセキュリティーにも効果があるが、いわば「マス・セキュリティ (Mass. Security)」とでも呼ぶべき、大規模な組織で膨大な台数を扱う際の各PCのセキュリティーにおいてこそ、その真価を発揮する。 ちなみに、2006年6月に国会で成立した企業改革法案(日本版SOX法)の施行に伴って、正確なPC資産管理と高度な「マス・セキュリティー」が、より一層企業に求められることとなる。 今後、「コンプライアンス」を推進する多くの企業が、富士フイルム同様に、vProテクノロジー対応PCを導入していくことになるだろう。
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