インテル Core 2プロセッサー・ファミリー(Conroe)の発熱と消費電力

2006/11/14 - トピックメーカー/田中伸一

 デスクトップ向けのXシリーズとEシリーズ、そしてノートブック向けのTシリーズと出揃ったインテル Core 2プロセッサー・ファミリー(Conroe/Merom)。前回のパフォーマンスに続き、今回はConroeの消費電力と発熱に着目する。

プロセッサー コア数 プロセス PCG*1) クロック TDP ケース温度*2)
(TDP時の最大)
 
X6800 2 65 nm 05B 2.93 GHz 75.0 W 60.4℃
E6700 2 65 nm 06 2.66 GHz 65.0 W 60.1℃
E6600 2 65 nm 06 2.40 GHz 65.0 W 60.1℃
E6400 2 65 nm 06 2.13 GHz 65.0 W 61.4℃
E6300 2 65 nm 06 1.86 GHz 65.0 W 61.4℃
 
Pentium XE 965 2 65 nm 05B 3.73 GHz 130.0 W 68.6℃
Pentium D 960 2 65 nm 05A 3.60 GHz 95.0 W 63.4℃
同上 2 65 nm 05B 3.60 GHz 130.0 W 68.6℃
Pentium D 840 2 90 nm 05B 3.20 GHz 130.0 W 69.8℃
Pentium 4 670 1 90 nm 04B 3.80 GHz 115.0 W 70.8℃
Pentium 4 661 1 65 nm 05A 3.60 GHz 86.0 W 69.2℃
Pentium 4 660 1 90 nm 04B 3.60 GHz 115.0 W 70.8℃
Celeron D 356 1 65 nm N/A 3.33 GHz 86.0 W 69.2℃

表1) 主なデスクトップ向けインテルプロセッサーのTDP

*1)
PCG・・・Platform Compatibility Guide 。プロセッサーとマザーボードの互換性を示すもの。
*2)
ケース温度(Tc)・・・パッケージ表面(ヒートシンク/放熱ファンと接触する面)にあるHIS(Heat Integrated Spreader)の中央部分で計測した温度。

熱プロファイルと最大ケース温度

 デスクトップPC向けインテル Core 2プロセッサー・ファミリーと、前世代の主なインテル プロセッサーのTDP(Thermal Design Power : 熱設計電力)を表1にまとめた。
TDPとは、プロセッサーが安定稼動できるケース温度(Tc)*2)の上限における最大消費電力を示すものである。以前の記事でも紹介したがインテルは、消費電力とケース温度の関係を“Thermal Profile(熱プロファイル)”としてプロセッサーごとに定義し、設計者向けに公開している。例えば、インテルCore 2 DouプロセッサーE6700(2.93GHz / L2キャッシュ4MB)の熱プロファイルは、0W時の最大ケース温度が43.2℃。そこからTDP65W時の最大ケース温度60.1℃まで、消費電力に応じてリニアに変化していく(表2および図1)。プロセッサーのケース温度がこの水準を超えるレベルでプロセッサーが長時間の稼動を続けるとシリコンにダメージを被る可能性が高くなる。逆に、熱プロファイルの水準を超えないように筐体の熱設計(放熱板やファンの配置、空気の対流など)を行っていれば、長時間稼動におけるプロセッサー、そしてシステムの安定性や信頼性を損なう要因のうち、「発熱」に関する部分は(とりあえず)クリアされることになる。

消費電力 最大ケース温度
0W 43.2℃
2W 43.7℃
64W 59.8℃
65W 60.1℃

表2および図1) Thermal Profile(熱プロファイル)の例

インテルCore 2 DuoプロセッサーE6700/6600の場合
“Intel Core 2 Extreme Processor X6800 and Intel Core 2 Duo Desktop Processor E6000 Sequence Datasheet – July 2006 (資料番号:313278-001) ”を元に作成したイメージ図

 表1に限定して言えば、ConroeのTDPは前世代のデュアルコア・プロセッサーと比較して最大1/2、同シングルコアと比べても40%以上低くなっていることがわかる。また、TDP時の最大ケース温度を見比べると、Conroeの方が10℃前後低く設定されている。

 ここでConroeが持つ特長の一つである「低消費電力」の意味について、改めて考えてみよう。前回の記事でお伝えしたとおりConroeは、前世代を大きく上回る性能向上を果たしている。
Intel NetBurstベースのプロセッサーにとって、パフォーマンス向上の‘拠り所’はクロック周波数だったが、それが同時に消費電力増大の要因となっていることは、もはや誰もが知る事実である。これに対してConroeは、従来プロセッサー以上のパフォーマンスを出しながら、その消費電力・発熱は、表1の通り、従来より格段に抑えられている。

一般のオフィスでも効果が期待できる低消費電力化

 「消費電力・発熱問題」と言うと、大抵の場合データ・センターやサーバー・ルームなど、数多くのサーバーを稼動させる用途に特有な課題だと思われがちだが、実は、たくさんのデスクトップPCが活躍しているオフィスも例外ではない。例えば電気代。企業は何十、何百、何千台ものPCを維持するために毎月電気代を支払っている。これを削減するには、台数を減らす、使用時間を短くするといった方法が考えられるが、現実的ではない。これに対して一つの理想的な解決策となるのが、PCの低消費電力化である。Conroeは、100W以上の電力を消費する従来プロセッサーを凌駕するパフォーマンスを、TDP65W(※E6000シリーズの場合)という電力消費で実現している。実際、先日開催された『インテル vPro テクノロジー・コンファレンス』において、あるPCベンダーの担当者から、vProマシン(つまりConroeマシン)への移行は電気代の節約につながるという声が聞かれたことから、Conroe(マシン)の省電力効果には期待していいと言える。

筐体設計の自由度も向上

 もうひとつ、消費電力や発熱は、筐体設計や静寂性に深く影響する。一般に、消費電力の大きなプロセッサーを使った場合、筐体内部の風通しをよくしなければならないため、どうしても大柄になることが多い。また、筐体を小さくした場合には、常にファンを高回転で作業させておく必要があるため、静寂性は期待できない(※代表例はラック・マウント型サーバーの騒音)。こうした観点からConroeを見ると、消費電力と発熱が抑えられている分、筐体設計の自由度が高いと言える。つまり、Conroeでインテルが行った「マイクロアーキテクチャーの刷新」は、高性能・低消費電力だけでなく、大小様々なフォームファクターに対応できるという側面を持つ。これは、Conroeのベース(基盤)であり、サーバーからデスクトップ、ノートブック、すべてに最適化できるよう考えられたインテル Core マイクロアーキテクチャーがもたらした副産物と言えるかもしれない。

クアッドコアにも引き継がれる低電力・高性能への期待

 以上、消費電力と発熱を中心にConroe、および前世代の代表的なプロセッサーを見てきた。マイクロアーキテクチャーが同じ場合、パフォーマンスが高い方が多くの電力を消費し、それに伴い発熱量が多い傾向は確かにあるが、全体的に見ると性能、(コアあたりの)消費電力、発熱の優位性について「シングルコアよりデュアルコア」、「Intel NetBurstよりインテルCore」、「90nmプロセスより65nmプロセス」という図式が成り立っていることがわかった。

 インテルはサンフランシスコで先日開催されたIDF Fall 2006において、デスクトップ向けクアッドコア・プロセッサー“Kentsfield”、およびサーバー向け“Clovertown”の投入予定が11月であることを公開したが、これが上記3つの流れを更に推し進めるものになることは間違いない。インテルによると、“Clovertown”のTDPはパフォーマンス向けが120W以下、メインストリーム向けが80Wになるとのこと。おそらくデスクトップ向けプロセッサーKentsfieldのTDPもこの近辺になると考えられるが、前世代のデスクトップ向けプロセッサーが100Wを越えていたことを考えると、低電力・高性能への期待は、否応無く膨らむ。

コラム ● 2つの“960”
インテル Pentium Dプロセッサーには、表1中の960のように同じプロセッサー・ナンバーでありながらTDP値が異なるモデルも存在する。これらはPCGを確認することで判別できるようになっている。PCG(Platform Compatibility Guide)とは、プロセッサーとマザーボードの互換性を示すもので、米Intelのリセラー向けサイトによると、末尾‘A’が主にメインストリームPC市場向け、同‘B’がパフォーマンスPC市場向けと位置づけられている。ただし、すべてのインテル プロセッサーが同じように分類されているわけではない。例えば、インテル Core 2プロセッサー・ファミリーの中で最もパフォーマンスが高いXシリーズ(とは言っても今のころX6800しかないが)はBに分類されているが、Eシリーズには今のところA、Bの区別は無い。また、インテル Celeron プロセッサー・ファミリーやノートブックPC向けのように市場が明らかなもの、そしてインテル Pentium IIIプロセッサーのような昔のプロセッサーにはPCG自体がない。

【参考資料】

  • Intel(R) Core(TM) 2 Extreme Processor X6800 and Intel(R) Core(TM) 2 Duo Desktop Processor E6000 Sequence Datasheet - July 2006 (資料番号:313278-001)
  • Intel(R) Pentium(R) D Processor 900 Sequence and Intel(R) Pentium(R) Processor Extreme Edition 955, 965 Datasheet - July 2006 (資料番号:310306-005)
  • Intel(R) Pentium(R) D Processor 840, 830 and 820 Datasheet - May 2005 (資料番号:307506-001)
  • Intel(R) Pentium(R) 4 Processor 6xx Sequence and Intel(R) Pentium(R) 4 Processor Extreme Edition Datasheet - November 2005 (資料番号:306382-003)
  • Intel(R) Pentium(R) 4 Processor 6x1 Sequence Datasheet - January 2006 (資料番号:310308-001)
  • Intel(R) Celeron(R) D Processor 300 Sequence Datasheet - September 2006 (資料番号:311826-002)

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